チーム型マネジメントを試してみた話
興味を持って頂きありがとうございます。いとひろ(@soxbidwhwork)です。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
先日、江藤美帆さん(えとみほさん)のツイートがタイムラインに流れてきて反応したのですが、どうやら世間的にも「チーム作り」が重要となる段階に来たと感じる方々が増えたようでまさに自分も同じ状況だよなと思ったことがあります。
「個人の時代」煽りは今年あたりで終わりを迎え、次は「チームの時代」になると思う(おばさんの勘)。 https://t.co/YYZl5I3N2N
— えとみほ (@etomiho) January 2, 2020
個人的にはもっと前からその流れは来ていたと思っているのですが、ここ数年叫ばれてきた「働き方改革」や「個人時代」を実践する中で「チーム作り」の重要性を感じる人が一気に増えてこういった話題が出てくるのだろうなと感じています。
「チーム作り」への取り組みについて前にブログで記事にした記憶があったのですが、改めて自分のブログ記事を見直したら該当する記事がなかったので、恐らく前にやっていたブログで書いたのをこのブログで書いたと勘違いしてしまったようです。。。
ブログを作っては消し、また新しく作っては消しを繰り返してきたのでもはやその記事は存在していないであろうとは思うのですが、いくつか放置したままのブログもあるのでもしかしたらあるかもしれません。ただ、せっかく当時やったことを放置するのも気持ち悪いので改めて記事にしたいと思います。
さて、この内容を改めて記事にしようと思ったのは、これまたえとみほさんのRTで流れてきたnoteを読んだからです。
今年からマネージャーになると決めた方の葛藤が書かれた記事なのですが、まさに数年前に私たちが実行した「チームメイト型マネージメント」を行う時に結構悩んだこととこの方の葛藤とがリンクする部分が多かったからなんですよね。ということで、人の土俵に乗っかる形にはなりますが、記事を書いていこうと思います。
目次
マネージャーになりたかった
当時勤めていた会社は典型的な日本企業で、上司が指示したことを着実にこなすことが求められるような体制になっていました。もちろん、ある程度は部署ごとに自由に動ける部分はあったのですが、部長/課長と言えど何かをやるにあたっては役員の判断を仰がなければならない場面が非常に多くて完全には自由に動けない状況でした。
更に問題なのは、従来の経営スタイルでも結果は出るのでわざわざ新しいことをしなくても「既存の業務をこなせばいい」という考え方が支配していたことです。実際のところはどうだったかと言えば、仕事ができる人が必死になって動き回ってなんとか結果を出していただけでした。しかも、従来のやり方は若手社員には受け入れられない部分が多くて入社から数年経つと辞めていく社員が多く、常に前線で戦っている人材の年齢がどんどん上がる一方で全体的に疲弊していっているのを実感していました。
そのような状況もあり、組織をきちんと作り上げることでチームとして戦えるようにしなければ今後ダメになってしまうという思いを非常に強く持っていたのです。ちょうど新卒で入社した時から仕事をしてきた先輩が部署の長に昇格するタイミングがあって、その先輩と共に戦えるチームを作ろうと動き始めました。
そういう意味では自分が真のマネージャーになったタイミングではなかったのですが、その先輩と話し合いをする中で私自身にもマネージャー的な役割を持った方が支援しやすいという結論になり、部署内でサブグループを作ってもらって何人かの部下をつけてもらうことにしました。
なぜあえてマネージャー的な立場を求めたかという点なのですが、私の中で以下の点にメリットを感じたからです。
1.決定権がある
2.チームとしての目標を作れる
3.底上げをする対象が明確になる
1.決定権がある
マネージャーが決められることは1社員として働いている時よりも増えます。もちろん、会社や部署の目標が上段に構えているわけなので、それらの目標を達成することを踏まえた上で動くことになりますから限定されることも多いですけどね。
ただ、その時は部長と連携して動いていたので通常考えられる範囲よりは広めに決定権をもらえることができました。自分自身では難しいなと思ったことは部長に伝えることによって、部長が決定したこととして動いてもらえたのも動きやすくなった要因かなと思います。
2.チームとしての目標を作れる
決定権があるの具体的な内容にもなるのですが、「チームとしての目標を作れる」ことがマネージャーとして最も欲しかった権利でした。なぜそこが重要だと思ったのかという点を説明したいと思います。
先ほど紹介したnoteの記事でモヤモヤしたと書かれているのですが、
なんでみんな、上司や会社に自分を引っ張ってもらおうと思ってんの!?
「上司になんてなりたくない私の葛藤」より
これはある程度仕方ないことじゃないかなと自分では思っていたからです。転職経験もないので他の会社がどうなのかを具体的には知らないのですが、新卒で入社したら研修を行なったりOJTとして先輩が指導をしたりという形で新人教育を行う会社が一般的ではないかと思います。
私が働いていた会社もOJTが新人教育と呼べる唯一のもので、
会社のやり方に慣れてもらう
↓
会社のやり方を忠実にこなせるようになってもらう
↓
年数経ったらもっと力を発揮してね!(ただし自分で考えて)
みたいな感じで育ってきた人がほとんどだったんですよね。規模が決して大きい会社ではなかったのもあるのでしょうけど、基本的には「自分自身で育つ人になる」か「指示したことをやる人になる」の2択だったのです。
自分自身で育つ人なんてのは別に何も言わなくても考えて行動するのでいいのですが、多くの人は言われたことをやっていれば給料をもらえるわけなのでわざわざそれ以上の結果を出そうと動こうとはしないですから。そして、そういう人だけではなくて、成長したいと考えていても自分自身で何をやればいいのかを見つけられない人もいます。それを踏まえて考えれば、上司や会社に引っ張ってもらおうと考える人が多いのも仕方ないよね、って結論に至ったわけです。
前置きが長くなりましたが、「チームとしての目標を作れる」ことによって「引っ張ってもらいたい」と考えている人たちを巻き込む形で動く名目を用意できる点にメリットを感じたわけです。会社の目標や部署の目標もあると言えばあるのですが、1社員にとってはあまり自分自身の成長と結びつけることができない目標であることが多くて使えませんからね。売上アップを目的とした目標がほとんどだったということもありますが。。。
3.底上げをする対象が明確になる
まずモデルケースとなる部署を自分たちで作り上げ、徐々に他部署を巻き込んで自力をつけた部署を増やした上で経営側に自分たちが入っていこう、と当時考えて動いていました。そのため、あくまでも1部署を対象に底上げを行うことがミッションだったので対象者を絞って取り組みを考えていたのです。
さらに、部署全体も部長と共に見ていましたがサブグループを作ってもらったことによって対象者を更に明確に絞れたことが動きやすさにつながりました。あと、マネージャーじゃないと同僚になるわけで、アドバイスという形で話をすることになるのだけでは限界を感じていましたからね。アドバイスをしても上司が違うことを言ったらおかしいと思っていてもそちらに従わなければならないので。それで結果的にやめていった若手が多かったので、自分がマネージャーという立場になることで守れるのも大きなメリットだったと思います。
チームとして戦う組織を作ろうとした
上意下達だけの組織からの脱却
これまたnote記事から引用させてもらいますが、私も同じように考えていました。
上司だろうと会社のルールで決まっていようと、自分の思った事は主張するし、交渉する。仕事のモチベーションは自分で上げるのが責任だと思っているし、上司に学ぶ事も多いけれど、上司だろうと誰だろうと間違う事はあるし、反対に私が教えた方がいい事もあると思っている
「上司になんてなりたくない私の葛藤」より
少し間違えると生意気な若造になってしまう考え方なのですが、自分自身で考えて動こうとしていると上司や先輩が適当な仕事をしているのとかが気になってしまうことがあるんですよね。もちろん、自分の考え方がすべて正しいわけではなくてこちらの主張が間違っていることもありますが。。。
それはそれとして、個人の努力だけでなんとかなる範囲は限られていて、上司がなんでも見通せて、なんでもできるということはないというのを前提とした動き方をすべきだと考えていました。そのような考え方もあって自分の思う通りに動く部下を作る形での組織ではなく、個々が切磋琢磨しつつ補完できる部分は補完し合う関係を持ったチームを作りたかったのです。
もちろん、上意下達が一概に悪いわけではないですから時と場合によっては一方的に指示を出すこともありました。その際も極力意図を説明することで理解を促す努力はしていました。あくまでも自主的に動いてもらわなければ指示を出す意味がなくなるからです。
とにもかくにも、チーム全員が我が事として関与してもらう環境を作り出すことによって従来のやり方ではでなかった力を発揮できるチームを作ろうとしていました。
判断基準の明確化
note記事でも書かれていましたが、私たちもまずは部署としてのビジョンを決めることで行動指針を決めました。
私はビジョンを判断の拠り所にしようと思いました。
社長が言ったから、マネージャーが言ったからとかではなく、全ての判断基準はビジョン。「上司になんてなりたくない私の葛藤」より
正直なところその時々によって意思に反してでもやらなければならないことが出てくるもので、ビジョンからブレた行動を取らざるを得ない場面はあります。それでもビジョンを持ち、それに準じた行動を基本とすることによって徐々にビジョンからブレた行動を取るケースが減ってきます。自分たちの行動はもちろんのこと、取引先にも自分たちがどのようなビジョンを持って動いているのかが徐々に伝わってくることによって良い関係を構築できる取引先が集まってくるからなんだと思います。
ちなみに、ビジョンと言ってもそんな大した内容ではなくて「お客様を第一に考える」みたいな感じのテーマを元に自分たちがどのようなことができるのかを既存ビジネスと新規ビジネスに落とし込んで考えたものでした。現時点で見えないものは「何年以内に実現するために今年1年検討する」くらいのざっくりした内容でしたけどね。
それでもビジョンを作り、行動指針を話し合って決めたことによって取り組みを振り返る時に「この行動はビジョンに沿っていたのか?」「ビジョンを実現するために動けたのか?」という判断軸が明確になったのでチームメンバーで話をする時にみんなが意見しやすい環境が作れました。議論や面談するにしても、軸がはっきりしていると考えやすいですからね。
意見を表明する環境を作った
判断基準を作った話の中でも書きましたが、チームメンバーが意見を表明しやすくするために判断軸を決めたことは意見を表明しやすい環境を作る一環としての取り組みでもありました。それまでの会議は部長が一方的に話をして、最後に「何かある?」と出席者に確認して終わりの会議がほとんどでした。その影響だけではないと思いますが、部署内でアイデアを出し合う会議をした際に発言するのは一部の人だけで、指名して無理やり発言させない限りは一言も発さないまま会議が終わる人もいる状況になっていました。
チームメンバー個々の持つ知見を生かそうと考える組織を作りたかったので、積極的に発言する環境を作らなければならないとそのような会議に出ていて感じていました。そのため、意見表明しやすい会議を行うための工夫をしてみたのです。
最初は強制的に発言機会を用意した
一見矛盾するようですが、取り組みを始めた当初は発言を強制していました。必ず発言する機会を設けて、どんなことであっても話をしてもらいました。新卒だろうが年配の人だろうが例外なく発言してもらったのです。
更に言えば、発言を強制する前の会議では発言をしなかった人に注意をしました。
「発言しなかった人がいますよね?何のために会議に出たんですか?発言しないというのはいろいろと考えて発言している人に失礼だと思わないのですか?」
みたいな感じの内容を会議の最後に部長から言ってもらいました。
皆が皆発言するのが好きじゃないのは理解していますし、発言を強制することが心理的な負担になる人もいるのはわかっているのですが、発言することを当たり前の環境にしたかったのでここは強行しました。
発言することを求める代わりに、
・発言内容の全否定はしない
・フォローする
この2点を上席の義務としました。意見を表明することが苦痛なものになったら意味ないですから、出てきた意見をなんとか汲み取ろうとする動きを上の人間が率先してやろうと考えたのです。徐々にこの取り組みが功を奏したのか、特に強制しなくても自由に意見を表明する環境ができてきたのでいつの間にか強制することはなくなり、発言が苦手だった人も積極的に意見するようになったので(少なくとも自分たちのチームでは)いい取り組みになったと思います。
報告型の会議を無くした
発言を会議で求めるようにすると同時に、報告型の会議を徐々に減らしていきました。会社からの指示などを伝える会議は開かなければならないので完全には無くしていませんが、これまで行ってきた数値関係の報告会議などは徐々に減らしてメールや共有ファイルを閲覧してもらう形での伝達に変えて年数回だけにまで抑えました。
その代わりにタイミングを見て個人単位で数値に対する話をする機会を設けました。面談というレベルではなくて、業務の合間に時間ができた時に少し話す機会を作る感じです。部署目標と個人目標の数値に関して現状と今後をどう考えているのかを確認するような内容が多かったです。
結局のところ、見ればわかる数値をわざわざ話す必要はないし、現状と今後について一言ずつ話すみたいな会議をやっても具体的なところは見えないのに時間はかかる会議をやる必要はなくて、個々人に少しの時間を割いて聞く方がより具体的な話が聞けるしアドバイス出せるのでそっちの方がいいなと判断しました。マネージャー側は大変ですが(笑)
なにより、報告型会議は特に発言が求められるものではないことが多いので、会議で発言せずに終わる習慣をつけて欲しくなかったというのが大きな理由でした。
積極的に上にツッコむ
これは「発言の全否定をしない」「フォローする」とは多少真逆の取り組みなのですが、部長の発言に違和感があった際に積極的にツッコむことを意識していました。部長が素晴らしい人だったというのが大きいのですが、会議で部長がおかしなことを言ったら上席の人間が積極的に「それはおかしいでしょ」と部長の意見を潰しにかかりました(笑)
もちろん、全否定はせずに「こっちの方が良くないですか?」という対案は出すようにしていました。また、部長と上席の人間だけで打ち合わせはしていて、意思疎通はしていたので多少演技の部分もあったのですけどね。
これも単純な話で、偉い人が言ったことが間違っていると思ったら意見を言っていいという環境を作るためにやっていました。みんなが発言する環境を作ったとしても部長の発言があるとそれをそのまま受け入れる状態だと意味がないですからね。あくまでもチームとしてより良いところを目指すために意見を出し合うことが目的で会議をやっているのだということをチームメンバーに理解してもらうための取り組みでした。
ま、結果として部長がおかしなことを言うと年配社員から新卒社員までが寄ってたかってツッコミを入れるようになったので部長は部長で大変だったと思いますけどね(笑) それでも、部長や上席の人間が発言した内容を何も考えずに受け入れることなく、より良くするためにどうすれば良いのかをプラスした意見を皆が出せるようになったので成功した取り組みじゃないかなと思っています。
評価/学びの機会を作る
入社してすぐの頃はOJTとして先輩社員が一緒に動くことが多いものの、年数が経過するとそれぞれが個別に動き回ることが多い仕事をしてました。わかりやすく言えば、営業の人みたいなもので最初は同行営業として先輩がついてくるけれどそのうち1人で営業先を回るようになる、みたいな感じです。
そのような状況になると自分の営業スタイルが確立してくるものの、他の同僚がどのような営業をしているのかを見る機会はなく、話を聞くくらいしか状況を把握する機会がありません。私がやっていた仕事も取引先のところに出向くことが多い仕事だったので同行しなければ同僚の仕事っぷりを見る機会がありませんでした。しかし、当然1人で済む仕事にもう1人がついていくわけなので会社としては「そんな無駄な時間があったら自分の仕事をしろ」と言われていました。
そこにうちの部署は反抗し、積極的に同行する機会を設けるようにしました。どのような行動を取っているのか、話し方はどうなのか、作業の仕方はどうなのかといったことを実際に見聞きすることで自分に生かせる部分を吸収して欲しかったからです。そこで見聞きした経験が自分自身の行動に役立つ機会がいつかくるかもしれないし、自分の経験と合わさることでより良い行動が取れるようになるかもしれないからです。
また、上席側の人間からすれば若手社員に同行することで現状の実力を把握して、適切なアドバイスを与える機会にもなります。職場での言動だけでは気づけない部分を把握するためにも普段見えていないところを見に行く価値はあります。あと、若手社員ががむしゃらに頑張っている姿を見て、「昔は自分もこんなに頑張っていたのに今は…」みたいに刺激を受けられるのも同行のメリットな気はします(笑)
同行の話に寄ってしまいましたが、それに限らず定期的に評価を伝えることや相談を受け付ける機会を設けていました。これもまた面談のような形式張ったものではなくて、お互い時間ができたタイミングで軽く打ち合わせするみたいな形で行なっていました。
結果
他にも細かくはいろいろとやったのですが、ざっくりと言えば上記のような取り組みを通してチーム型マネジメントを試してみました。それぞれの項目で書いたところもありますが、以下のような特徴を持ったチームが作れたと思います。
・ビジョンに沿った行動を意識して言動できる
・全員が躊躇なく発言できる
・それぞれにレベル差はあるものの、自分の考えを持って行動できる
・自身の活動だけでなくチームメンバーの行動に興味を持ち、助けられることがあれば助ける
結構いいチームになったと自分たちでは思っています。実際、この取り組みを始めて1年くらいで売上や利益といった数値面でもいい結果が出ましたからね。なにより、当時会社として問題となっていた若手社員の退職がうちの部署に限っては出なかったという点が最も大きかった気がします。新卒社員が入るたびに直近に入社した若手社員が「あの部署に配属になったら当たりだよ」と言っていると聞いた時はやってよかったと心底思ってましたからね。
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ここまで成功したのになぜ「前の会社」での話なのかについては特に詳しく書く予定はないのですが、0から1を作る難しさもあるものの1を2にすることの難しさってのも大きくてですね…
そういう意味では「従来の経営から大転換して成功させた」なんて話を見ると、それを実現した人のことを尊敬して止みません。
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